「スポットワークのキャンセル」企業が知っておくべき法的リスク

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

近年、「スポットワーク」や「単発バイト」と呼ばれる働き方が急速に広がっています。
アプリを使い、必要な時に必要な人数だけ働いてもらえるため、企業にとっても、働く側にとっても便利な仕組みです。

しかし最近、この「気軽さ」に警鐘を鳴らす判決が出ました。

今回はこの判例についてお話ししたいと思います。

勤務直前のキャンセルに支払い命令

東京簡易裁判所は、「単発バイトでマッチング成立後、勤務直前に一方的にキャンセルした飲食店」に対し、未払い賃金等として6,800円の支払いを命じました。

働く予定だった大学生は、前日にキャンセルの連絡を受けました。
裁判所はこれを「店側の都合によるキャンセル」と判断しました。

なぜ「キャンセル」が問題になるのか

ポイントは、労働契約がいつ成立するかです。
多くの企業は「単発バイトは当日来てから雇用が始まる」「アプリはあくまで予約」と考えがちです。

しかし裁判所は、アプリ上で条件が合意し、マッチングが成立した時点で労働契約は成立している
と判断しました。

つまり、企業が一方的にキャンセルすれば、
通常のアルバイトを直前に休ませた場合と同じ扱いになるのです。

労働基準法ではどうなる?

労働基準法には、次のようなルールがあります。

会社の都合で労働者を休ませた場合、平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払わなければならない。

今回のケースは、
• 働く意思がある
• 企業側の判断で仕事がなくなった

という点から、「使用者都合の休業」と判断された可能性が高いといえます。

集団訴訟に発展する動きも

現在、スポットワークを巡る問題は、集団訴訟の原告募集にまで発展しています。
対象は大手物流会社などで、過去の直前キャンセルが争点です。

もし請求が広く認められれば、企業には多額の未払い賃金の支払い義務が生じる可能性もあります。

これは、単なる一企業の問題ではなく、業界全体の人材活用のあり方が問われていると言えるでしょう。

企業が気をつけるべきこと

スポットワークは便利な制度ですが、次の点に注意が必要です。
• マッチング成立後は「労働契約」と考える
• 忙しさを理由に安易にキャンセルしない
• キャンセル規定を社内で明確にする
• プラットフォーム任せにせず、労務管理の視点を持つ

「少額だから大丈夫」「単発だから問題ない」という考えは、もはや通用しない時代になりつつあります。

まとめ

スポットワークは、正しく使えば非常に有効な人材確保手段です。
しかし、労働契約である以上、通常の雇用と同じ法的責任が伴うことを忘れてはいけません。

自社の運用が法的に問題ないか不安な場合は、早めに専門家へご相談ください。
トラブルを未然に防ぐことが、結果として企業と働く人、双方を守ることにつながります。

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