「賃金台帳」の“ちょっとした嘘”が大問題に?企業を守る正しい労務管理とは

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

今日の労働新聞で、奈良県の企業が 賃金台帳に虚偽の労働時間を記入していた として、労働基準監督署から書類送検されたというニュースが載っていました。
内容は、従業員の毎月の労働時間を、実際より数十時間も少なく記載していたというものです。

この事件は「うちはそんなことしないから関係ない」と思われるかもしれません。しかし、実は知らず知らずのうちに同じような状態になっている会社は少なくありません。
今回は法定3帳簿の一つである「賃金台帳」とその記載についてお話ししたいと思います。

■ 賃金台帳の記載は「正確に・遅滞なく」が原則

賃金台帳とは、従業員の給与や労働時間などを記録する、会社が必ず作らなければならない帳簿の一つです。
労働基準法では、この賃金台帳について、
• 正確に記録すること
• 遅滞なく記入すること

が義務付けられています。

今回書類送検されたケースでは、実際に働いた時間と、賃金台帳に記載された時間が一致しておらず、労基署はこれを “虚偽記載”=正確に記入していない行為 と判断しました。

■ 実は「過少申告」はすぐにバレる

労働時間の記録には、通常以下のような複数の情報源があります。
• タイムカード
• 勤怠管理システム
• 出勤簿(手書き含む)
• 賃金台帳

これらの数字の 整合性が取れていることが大前提です。
どれか一つだけ数字が異なる状態は、ほぼ確実に労基署から指摘を受けます。

また、残業時間を少なく書くと当然、割増賃金の支払いも不足します。これは 未払い残業代問題 に直結するため、企業にとって大きなリスクになります。

■ なぜ虚偽記載は重く扱われるのか?

「残業が多いだけなら指導で済むこともあるのに、なぜ虚偽記載は書類送検なのか?」

最大の理由は、労働時間の帳簿は労基署が調査する際の「公式な証拠」になるからです。

もし企業側が、その証拠となる帳簿を 意図的に改ざんしたり、虚偽の数字を入れたりすると、隠ぺい行為 と見なされます。
これは悪質性が高いと判断され、厳しく捜査される可能性が高くなります。

つまり、“残業が多いこと”ではなく、“隠すこと”が最大の問題なのです。

■ 企業が気をつけるべきポイント3つ

今回の事例から、企業が押さえておくべき重要ポイントを整理します。

① 出勤簿・タイムカードと賃金台帳を必ず一致させる

数字が合っていない場合、まず疑われるのは「隠ぺい」です。
自社の帳簿を改めてチェックしてみてください。

② 勤怠管理システムを入れていても安心しない

システムはあくまで記録を支援しているだけで、
賃金台帳への正確な転記は会社の責任です。

③ “少しの誤差”でも放置しない

5分・10分の丸め処理や曖昧な管理も、結果的に未払い残業代につながることがあります。
日常の積み重ねが大きなトラブルを生むことを肝に銘じましょう。

■ 正しい労務管理が企業を守る

今回の書類送検のニュースは、
「労働時間を正しく記録する」
というごく基本的なルールが、実は企業にとっていかに重要かを示しています。

労務管理は複雑で、法律の改正も多く、忙しい企業ほど後回しにしがちです。
しかし、帳簿の記録や勤怠管理の整備は、会社をトラブルから守る最初の防波堤です。

「うちの管理方法は大丈夫かな?」
「記録の整合性に不安がある…」

そんな場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。
第三者の視点でチェックを行うことで、トラブルの芽を早めに摘み、安心して事業に専念できる体制づくりをお手伝いいたします。

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