法改正情報⑥ 働き方が多様化する時代に向けて――割増賃金ルール見直しの背景と影響

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

近年、テレワークの普及や働き方改革の後押しもあり、「副業・兼業」を認める企業が急速に増えています。

その一方で、これまで想定されていなかった課題も浮き彫りになってきました。その代表例が「副業・兼業者の労働時間をどう管理し、どこまで割増賃金を払うのか」という問題です。

現在、国では労働基準法の改正に向けた議論が進んでいます。今回はこの「副業者の割増賃金ルールの見直し」についてお話ししたいと思います。

● 現在のルール:副業先の労働時間も“通算”して残業扱いに

現行の労基法では、複数の会社で働く場合であっても、労働時間はすべて通算する とされています。つまり、

  • 本業で1日8時間働く
  • 副業でさらに3時間働く

この場合、副業の3時間は残業扱いとなり、割増賃金を支払う必要があるという考え方です。しかし、この仕組みには課題があります。

副業先の企業としては、「本人の意思で副業しているのに、残業代まで負担するのは負担が大きい」。また、複数の職場の勤務状況を正確に把握することも難しいため、実務的にも複雑です。

● 改正案の方向性: “通算しない” 方向で議論が進む

そこで報告書で示された方向性が、副業・兼業の労働時間は通算せず、それぞれの会社ごとに割増賃金を計算するというものです。

つまり、本業の企業は本業の勤務時間に基づいて割増を計算し、副業先は副業先の時間に基づいて計算します。このことによって

  • 副業時間まで残業代の対象にすると、副業社員を採用しづらくなる
  • 労働時間の管理を企業同士で連携するのは実務的に難しい

といった点を改善する狙いがあるとされています。

● しかし課題も多く、最終的な内容はまだ確定していない

一方で、労働者側にはこんな懸念もあります。

  • 割増賃金が減り、収入に不利益が出るのでは?
  • 労働時間を通算しないと、長時間労働が見えづらくなり健康被害が起きる可能性

このように、双方の利益や安全をどう守るかは難しく、現在も議論が続いています。

● 企業として今から準備しておくべきこと

法改正は早ければ2026年にも施行される可能性があります。今のうちから以下の点を見直すことがおすすめします。

  • 副業に関する就業規則の整備
  • 副業申請・報告フローの明確化
  • 健康管理・長時間労働リスクへの対応
  • 副業者の労働時間の扱いに関する社内ルールの検討

ルールが変わったとしても、「労働者の健康確保」は必ず企業が向き合うべき責務です。

まとめ

副業・兼業は今後も増えることが確実で、それにあわせてルールも変わろうとしています。

「割増賃金の通算ルール」は、企業にとっても労働者にとっても大きな影響があり、今後の審議内容に注目が必要です。

当事務所でも、制度変更に伴う就業規則の整備や労務相談に対応しております。気になる点があればお気軽にご相談ください。

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