法改正情報⑤ 休む時間を守る法律ができる?『つながらない権利』が企業にもたらす変化

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

スマートフォンやチャットツールが普及し、働く時間と休む時間の境界線がどんどん曖昧になっています。
「夜に上司からメッセージが届く」
「休日でも急な連絡に備えないといけない」
そんな状況にストレスを感じる方も多いのではないでしょうか。

こうした課題を踏まえて、労働基準法の見直しの中で注目されているのが 「つながらない権利」 です。2026年以降の改正に向けて議論が進んでおり、企業としても早めの理解と準備が求められます。そこで今回はこの「つながらない権利」についてお話ししたいと思います。

「つながらない権利」とは?

「つながらない権利」とは、勤務時間外や休日に会社からの業務連絡に対応しないことを認める仕組みのことです。

欧州ではすでに法制化が進んでいる国もあり、
「勤務時間外は連絡をしない・させない」
という考え方が広がっています。

日本でもテレワークやスマホ業務が増えたことで、「実質的な長時間労働」を防ぐ必要性が高まり、この権利を法制度として確立する方向で検討が続いています。

なぜ今、この権利が必要なのか

背景には次のような社会的変化があります。
• 勤務時間外の隠れ残業が増えている
メール返信やチャット対応も実質的な労働ですが、記録されにくく評価もされにくいのが実情です。
• テレワークでオン・オフの切り替えが難しくなった
自宅で働くことが増え、気がつけば夜まで仕事の連絡を見てしまう人も増えました。
• メンタルヘルスへの影響
常に「連絡が来るかもしれない」と考えるだけで大きな負担になります。

労働時間を減らすだけでは解決できない「負担」があることが明らかになり、休息の権利をより積極的に守る仕組みが必要になってきたのです。

法改正でどうなる?現時点でのポイント

現段階では 最終的な法案は確定していません。ただし、審議会などでは次のような方向性が示されています。
• 勤務時間外の連絡に関する ガイドライン を整備
• 業務連絡のルール化(時間帯の設定など)
• 会社の「勤務時間外の連絡に依存しない働き方」への転換促進

会社にとっては、
「法制化されたらどう運用すべきか」
「うちの業種でも対応できるのか」
といった疑問が出てくるところですが、今から準備しておくことで混乱を最小限にできます。

会社がいま準備しておきたいこと

実際に制度が始まる前から、次の取り組みを進める企業が増えています。

① 勤務時間外の連絡ルールを明文化する

「どの時間帯は連絡して良いか」「どの内容は急ぎか」など、基準を作るだけでも大きな改善につながります。

② 業務フローの見直し

連絡しないと仕事が回らないとすれば、そもそもの体制に問題がある可能性があります。

③ ITツールの設定調整

自動送信の時間を変更したり、チャットの深夜通知を避ける設定をする企業も増えています。

④ 管理職向けの研修

上司の意識や価値観が職場文化を左右します。管理職研修は特に重要です。

「休む権利」を守ることが企業の利益にも

つながらない権利は「労働者を守るだけの制度」と思われがちですが、実は 企業側のメリットも大きい のが特徴です。
• 過重労働の防止で離職率が下がる
• 生産性向上とミスの減少につながる
• 働き方の透明性が高まり、採用競争力が上がる

これからの企業経営では、
“働く人の時間と健康を守れる会社かどうか”
が重要な評価ポイントになります。

まとめ

2026年以降の労働基準法改正で注目されている「つながらない権利」。
日本の働き方を大きく変える可能性を持つテーマです。

「勤務時間外の連絡を減らすだけ」であれば、今日からでも始められます。
企業・従業員それぞれが安心して働ける環境づくりのため、早めの準備をおすすめします。

社労士として、制度の整備や社内ルール策定のサポートも可能です。
ご相談がございましたら、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

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