法改正情報④「有給休暇の賃金算定方式の統一」で何が変わる?

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

働き方改革の浸透により、企業では有給休暇の取得がますます重要になっています。しかし、実はその裏で「ある問題」が長年指摘されてきました。特に飲食店・販売・介護・コールセンターなど、複数の勤務パターンで働くパート・アルバイトの方に大きく影響する問題です。

それは――
有給休暇を取ると、実際に働くよりも賃金が少なくなってしまうことがある ということです。

今回は、2026年以降に改正が検討されている「有給休暇の賃金算定方式の統一」、そしてこの法改正で何が変わろうとしているのか、についてお話ししたいと思います。

現在のルール:有給の賃金は「3つの方式」から選べる

現在の労働基準法では、有給休暇を取った日の賃金の計算方法として、以下の3つの方式から企業が選べる仕組みになっています。
1. 平均賃金方式(過去の賃金を平均して計算)
2. 通常の賃金方式(その日に働くはずだった金額で計算)
3. 標準報酬日額方式(社会保険の基準額で計算)

一見すると柔軟性があるように見えますが、じつはこれが パート・アルバイトの方に不公平を生みやすい原因 になっています。

どんな不公平が起きるのか?具体例で見てみましょう

たとえば、以下のようなパート従業員Aさんがいるとします。
• 長いシフト:7時間勤務
• 短いシフト:4時間勤務
• シフトは月によってバラバラ
• 時給1200円

このAさんが、たまたま 7時間勤務の日に有給を取ったとしましょう。
この時、会社が「平均賃金方式」を採用していると、過去の働き方の平均から算出した金額が支払われます。

その結果、実際には 4〜5時間程度の賃金しか支払われない……という状況が起こり得ます。

つまり、有給を取るとこうなります。
• 本来働けば → 7時間 × 1200円 = 8,400円
• 平均賃金方式だと → 2,000〜3,000円台になることも

これでは、「長いシフトの日は有給を取りたくない」
という気持ちになってしまいますよね。

このように、勤務時間にバラつきがあるパートさんほど、有給取得を躊躇するという問題が生じてしまいます。

シフトが確定していないと「通常の賃金方式」も計算しづらい

同時に、もう一つの問題があります。

シフト制の職場では、翌月のシフトが直前まで決まらないことも珍しくありません。
その結果、
• 有給を取る日が「7時間勤務なのか、4時間勤務なのか」が確定しない
• 「その日に働くはずだった金額(通常の賃金)」が計算できない

という事態が起こります。
企業としても、どの時間数で計算するのが正しいか判断が難しく、従業員とのトラブルにもなりかねません。

問題の解決へ向け、制度の見直しが進んでいる

こうした不公平や混乱を解消するため、2026年以降の労働基準法改正では、「有給休暇の賃金算定方式を、原則として“通常の賃金方式”に統一する」
という方向で議論が進んでいます。

つまり、有給を取った日は、もし出勤していたら受け取っていた金額を支払うというシンプルで公平なルールに揃えよう、ということです。

特にパート・アルバイトの方にとっては、
「勤務時間が短い日も長い日も、休めば同じように補償される」という安心感が得られるようになります。

企業としても、複数の方式を選んで管理する煩雑さがなくなり、給与計算や就業規則の見直しがやりやすくなるメリットがあります。

まとめ:パートの働き方の多様化に合わせた制度へ

現代の職場では、シフトが週ごと・日ごとに変わる働き方が当たり前になりました。
こうした多様な働き方に対し、従来の「平均賃金方式」は合わなくなってきています。
• 長い勤務の日に有給を取ると損になる
• シフトが未確定だと計算できない
• 従業員同士の不公平感が生まれる

こうした課題を解決するために、計算方法の統一が進められているのです。

当事務所では、今回のテーマを含む「2026年労基法改正への実務対応」についてもサポートしております。

就業規則の見直しや、有給管理、勤怠システムの設計などでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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