法改正情報②『法定休日の特定義務化』とは?
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
現在、法改正が検討されている労働基準法で、今回は「法定休日の明確な特定義務」 についてお話ししたいと思います。
「うちの会社は週休2日だし、休日は決まっているよ」と思われるかもしれません。しかし、現行法では “どの日が法定休日か” を事前に特定しなくても運用できるできているのが現状です。
そのため、特にシフト制・交替制の職場では、従業員から次のような声が出ることも珍しくありません。
「今週の ‘法定休日’ はどの日なんですか?」
「休日出勤の割増って、この日は何%になるんですか?」
休日の種類が曖昧なままだと、割増賃金や勤務計画の認識違いが生まれやすく、労使トラブルの火種にもなります。
こうした背景から、「法定休日をあらかじめ明確にしておきましょう」という方向で改正が検討されています。
◆ なぜ今、「法定休日の特定」が必要なのか?
ポイントは次の3つです。
1. 休日の“見える化”
従業員が生活設計を立てやすくなります。「急に休みが変更された」「週のどこに休みがあるか分からない」といった混乱を防げます。
2. 割増賃金計算のトラブル防止
法定休日に働いた場合は 35%以上の休日割増 が必要ですが、所定休日の場合は計算が異なります。
あらかじめ決めておくことで、会社と従業員の間で「どの日が休日扱いか」について誤解が起こりにくくなります。
3. 過重労働防止
休日が明確になれば、連続勤務や過密シフトが起こりにくくなります。
◆ 具体的にどう変わるのか?
検討されている改正案では、会社に対して次のような義務が課される可能性があります。
- 就業規則や年間カレンダーで“どの曜日(または日付)が法定休日か”を明示する
- シフト制の事業場では、個人ごとにシフト表で法定休日を事前に表示する
たとえば…
◆【事例①:小売店のシフト制の場合】
これまで:
- 4週4休のように大まかなルールだけを定め、シフト作成後に結果的に休日が決まることが多い。
改正後:
- 「Aさんの今週の法定休日は水曜日」「Bさんは日曜日」といった形で、事前に個別に休日を確定させる 必要が出てきます。
◆【事例②:オフィスワークで週休2日の会社】
これまで:
- 就業規則に「週休2日、休日は土日」と書いてあれば、明確性は担保されている。
改正後:
- 基本的には従来どおりで問題なし。ただし、会社独自の休日調整を行っている場合は、法定休日と所定休日を分類し直す作業が必要になる可能性があります。
◆ 実務で起こりうる“困りごと”
法定休日を事前に決めると、次のような課題も生じます。
- シフト変更が多い職場では、「休日の再設定」が煩雑に
- 就業規則の見直しや、勤怠システムの設定変更が必要
- 管理職が「法定休日」概念を正しく理解していないと、運用ミスが起きる
- 法定休日と所定休日の区別を説明するための社内研修が必要になるケースも
ただし、これらは適切なルール作りと運用マニュアルの整備で解決できます。
◆ 企業が今から準備すべきこと
- 就業規則・休日カレンダーを見直す
- 法定休日と所定休日を明確に区分する
- シフト制の場合は個人別休日の表示ルールを作る
- 勤怠・給与計算システムをチェックする
- 管理職・従業員への説明を行う
特にシフト制企業では、早い段階で運用ルールのシミュレーションを行うことをおすすめします。
◆ 最後に:法改正はまだ“検討段階”です
今回の内容は、2026年以降の改正に向けて議論が進んでいるものですが、最終的な条文や施行時期は今後の審議で決まります。
しかし、方向性として 「休日の明確化」 は確実に重視されており、多くの企業で備えが必要になると考えられます。
社会保険労務士として、当事務所では
- 就業規則の見直し
- シフト制の休日管理の整備
- 運用ルールの構築
など、企業様の状況に合わせたサポートをご提供しています。
ご不明点があればお気軽にご相談ください。


