寝てるのに働いてる!?知らないと危ない「仮眠時間は労働時間?」を徹底解説!
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
今回は、多くの事業所から相談が寄せられるテーマ――「仮眠時間は労働時間になるのか?」についてお話ししたいと思います。
特に介護・医療・警備・運輸業など、夜勤がある職場では切っても切れない問題です。実際、「仮眠って寝てるんだから仕事じゃないでしょ?」と思っていると、後から思わぬトラブルにつながることがあります。
■そもそも「労働時間」とは?
労働時間とは、労働者が会社の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
ポイントは“実際に働いているかどうか”よりも、会社の指示に従わざるを得ない状態かどうかです。
たとえ休憩していても、自分で外に出られなかったり、呼ばれたらすぐ動かなければならなかったりすれば、労働時間と判断されることがあります。
■では「仮眠時間」はどう判断される?
結論から言うと――
👉 一定条件を満たせば休憩・睡眠時間として労働時間にならない
👉 条件を満たさなければ労働時間として扱われる
つまり、ケースバイケースです。
■【事例①】介護施設の夜勤者
夜勤職員2名体制。
深夜1時〜3時の2時間が「仮眠時間」とされているが、何かあればすぐ対応しなければならない状態。
●実際にはナースコールが鳴れば対応
●建物から自由に出られない
●交代で見回りも実施
この場合、
→ 仮眠中でも職員は完全に自由ではなく、いつでも対応が必要な状態。したがって、労働時間と判断される可能性が高いです。
■【事例②】運送会社の長距離運転手
長距離移動の途中で、会社が用意した宿泊施設で6時間睡眠。この間は、会社からの指示もなく完全に自由。
●いつ起きるかも本人次第
●呼び出しなし
●外出も自由
この場合、
→ 完全に拘束されていないため、労働時間とは扱われないのが一般的。ただし、トラックの車内での「仮眠」が労働時間かどうかは状況により大きく変わるため、個別判断が必要です。
■労働時間になるかどうかのポイント
厚生労働省や裁判例でも、以下のような観点が重視されます。
①会社の指示ですぐ対応しないといけないか?
→ 呼び出しがあれば応じる必要があるなら、労働時間。
②場所的拘束があるか?
→ 勝手に外出できなければ労働時間と判断されやすい。
③睡眠が実質的に保障されているか?
→ 睡眠室があり、起こされることがないなら休憩扱いにしやすい。
④会社が労務提供の対価として定めた時間か?
→ 夜勤手当や仮眠手当の設定もポイント。
■なぜ“仮眠”の扱いが重要なのか?
もし仮眠時間が労働時間なのに休憩と扱っていると…
●未払い残業代が発生
●労基法違反として是正勧告の対象
●追加の割増賃金請求につながる
●従業員とのトラブル・信頼関係の悪化
こうしたリスクがあります。
特に夜勤の多い業界では、仮眠時間の扱いを誤ると長時間労働の隠れ原因になるため注意が必要です。
■仮眠時間を適正に扱うためのポイント
✔ 仮眠時間のルールを就業規則に明確に記載する
✔ 完全に自由時間にしたい場合、拘束を取り除く
✔ 仮眠室や休憩室を整備して睡眠の自由度を担保する
✔ 呼び出しがある運用にしたい場合は、労働時間として割り切る
✔ 実態に合った割増賃金を支払う
「うちは仮眠って言ってるし大丈夫」と思っていても、実態で判断されます。形だけ“休憩”にしても、実際に拘束していれば労働時間扱いです。
■まとめ
仮眠時間は、自由度があれば休憩、拘束があれば労働時間と判断されます。特に夜勤のある職場は、トラブルを未然に防ぐためにも取り扱いを明確にしておくことが重要です。
「うちの会社の仮眠時間は大丈夫?」「就業規則の書き方に不安がある…」
そんな疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。実態に合わせた運用・規程作成をサポートいたします。


