最低賃金が大幅アップ!会社が押さえたい“実務のポイント”とは?」

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

近年、日本の最低賃金は全国的に過去最大級の引き上げが続いています。

「今年はいくらになるの?」「うちの社員の給与は大丈夫?」と心配される企業の方も増えてきました。最低賃金の改定は、従業員の生活に直結する重要な制度でありながら、実務上の判断が意外と複雑で、見落としやすいポイントも多く存在します。

今回は、最低賃金が大幅に上がっている背景とともに、会社が特に気をつけたい“最低賃金を判断する際の注意点”についてお話ししたいと思います。

■ なぜ最低賃金は大きく上がり続けているのか?

① 物価上昇による生活防衛のため

食品・光熱費・日用品など、生活必需品の価格上昇が続いており、実質賃金の低下が問題となっています。政府は働く人の生活を守るため、最低賃金の大幅な引き上げを進めています。

② 国の“全国平均1,500円”という目標

政府は数年以内に最低賃金全国平均1,500円を目指しており、この目標達成には毎年大幅な引き上げが必要です。そのため、ここ数年は引き上げ幅が例年以上に大きくなっています。

③ 深刻な人手不足

少子化による労働力不足の影響で、どの業界でも人材確保が難しくなっています。企業が働き手を確保するためにも賃上げが求められており、この流れが最低賃金の上昇と一致しています。

④ 中小企業向け支援策の拡充

最低賃金の引き上げは、中小企業にとって大きな負担となります。そこで国は、業務改善助成金や省力化のための補助金など、支援策を拡充しています。「最低賃金を上げやすい環境」が整っていることも、引き上げが進む要因です。

■ 発効日は都道府県によって違うので要注意

最低賃金は全国一律ではなく、都道府県ごとに別々に決まる制度です。そのため、審議のスケジュールや告示のタイミングが異なり、結果として発効日にも地域差が生まれます。

給与計算の処理を誤ると、知らない間に最低賃金違反となる恐れがあります。毎年必ず、自社所在地の発効日を確認しましょう。

■ 最低賃金の“判断で気をつけたいポイント”

最低賃金の判断は単純なようでいて、実は抑えておかないといけないポイントがあります。最低賃金法違反にならないように次のポイントを確認しましょう。

① 月給者は時間当たりに換算して確認する

最低賃金は“時給”で決まっています。

月給者でも 月給 ÷(1か月平均所定労働時間)=時間当たり賃金 を算出し、最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。

② 残業代は含めてはいけない

最低賃金との比較では、

  • 基本給
  • 職務手当等の“毎月必ず支払われる手当”
    のみが対象となります。
    残業代や通勤手当、精皆勤手当などは原則として含められません。ここを誤ると、気づかないうちに最低賃金違反となってしまいます。

③ 賃金控除後の額ではなく「支給額」で判断する

社会保険料や税金の控除後の手取り額で判断してはいけません。あくまで“控除前の賃金”で比較します。

④ シフトや短時間勤務者も対象

パート・アルバイトや短時間勤務の従業員も当然ながら最低賃金の対象です。勤務時間が短いほど時給単価の見落としが起きやすいため注意が必要です。

■ まとめ

最低賃金は、物価上昇や政府の賃上げ方針、人手不足などの社会的な背景を受け、今後もしばらく大幅な引き上げが続くと見込まれています。

企業にとっては負担もありますが、適切に確認し、必要に応じて支援制度を活用することでリスクを抑えることができます。

最低賃金の判断や給与設計で不安がある場合は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。

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