労働基準監督署の“監査”ってなに? 〜突然の訪問にも慌てないために〜
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
経営者の皆さま、「労働基準監督署の監査(調査)」と聞くと、少しドキッとしませんか?
「うちは小さい会社だから関係ない」と思われる方も多いのですが、実はどんな規模の会社でも対象になる可能性があります。今回は、労働基準監督署(以下、「労基署」)の監査で実際にチェックされる主な項目と、事前に確認しておきたいポイントについてお話ししたいと思います。
■ そもそも労基署の監査とは?
労基署の監査は、企業が労働基準法などの労働関係法令を守っているかを確認するために行われます。
監査には大きく分けて「定期監督」と「申告監督(労働者からの通報によるもの)」の2種類があります。
最近では、長時間労働や未払い残業代、社会保険未加入などが問題視されるケースが多く、これらに関する監査が増えています。
■ チェックされる主な項目
労基署の監査で確認されるのは、主に次のような書類や実態です。
① 労働条件通知書・雇用契約書
すべての従業員に対して、労働条件を明示しているかが確認されます。特に「労働時間」「賃金」「休日・休暇」「契約期間」などの記載漏れは要注意です。
② 就業規則
常時10人以上の労働者を使用している事業所は、就業規則の作成と届出が義務です。古い内容のまま放置している場合、現状と合わずに指摘を受けることがあります。
③ タイムカードや勤怠記録
「残業時間が適正に管理されているか」「36協定の範囲内か」などを確認されます。打刻漏れや実態と合わない記録は、是正勧告の対象になることもあります。
④ 賃金台帳・給与明細
残業代や深夜手当、休日出勤手当が正しく支払われているかチェックされます。特に「固定残業代制」を導入している企業は、その根拠や計算方法が明確であるかが重要です。
⑤ 36協定(時間外・休日労働に関する協定)
36協定を締結・届出していないまま残業をさせている場合は、即アウトです。また、協定は毎年更新が必要ですので、期限切れにも注意しましょう。
■ 監査の流れと対応のコツ
監査は、まず労基署から「臨検監督を行います」という通知が届きます。指定された日時に、上記の書類を用意して立ち会う形が一般的です。中には抜き打ちで訪問されるケースもありますが、多くは事前連絡があります。
監査の際は、隠さず・偽らず・正直に説明することが基本です。違反が見つかった場合でも、誠実に対応すれば「是正勧告書」が出され、改善の機会をもらえることがほとんどです。
■ 監査に備えるためにできること
- 就業規則・労働契約書・36協定の整備
- 勤怠・給与データの整合性確認
- 長時間労働の是正と有給休暇の取得促進
- 社内での労務相談体制の構築
これらを日頃から整えておくことで、監査が入っても慌てる必要はありません。また、外部の社会保険労務士に定期的なチェックを依頼することもおすすめです。
■ まとめ
労基署の監査は「企業を罰する」ためのものではなく、「働く環境を整える」ためのものです。
しかし、対応を誤ると是正勧告や罰則につながる場合もあります。日頃から労務管理を整備し、「指摘されても困らない会社づくり」を目指しましょう。
当事務所では、監査対応の事前チェックや書類整備のサポートも行っています。「うちは大丈夫かな?」と不安を感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。


