年俸制の落とし穴!? 実は“年俸”でも毎月の残業代は必要なんです!

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

時々「うちは年俸制だから残業代は出ません」といった話を耳にすることがあります。

しかし――それ、本当に正しい運用でしょうか?

実は、「年俸制=残業代がいらない」というのは大きな誤解です。

今回は、労務トラブルの相談でもよくある「年俸制」についてお話ししたいと思います。

■ 年俸制ってそもそも何?

「年俸制」とは、1年間の給与額をあらかじめ決め、その金額を12か月(または14か月など)に分けて支払う制度です。つまり、「年収ベースで給与を決める」というだけで、月給制と本質的には大きく変わりません。

たとえば、年俸600万円なら、12で割って毎月50万円ずつ支払う、というイメージですね。

■ 年俸制でも残業代は必要!

年俸制を導入している会社でも、労働基準法は適用されます。そのため、管理監督者などの一部例外を除き、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働には残業代の支払いが必要です。

よくある誤解が、「年俸に残業代が含まれている」というケース。たとえ就業規則や契約書にそう書かれていても、「どのくらいの時間分の残業代を含むのか」が明確でなければ、トラブルのもとになります。

■ トラブルになりやすいポイント

たとえば、次のような契約書は要注意です。

年俸600万円(時間外手当を含む)

この書き方では、何時間分の残業を想定しているのかがわかりません。裁判例でも、このようなあいまいな記載は「残業代が含まれているとは認められない」とされることがあります。

結果的に、会社が過去の残業代をまとめて支払うことになり、大きなコスト負担になるケースも少なくありません。

■ 正しい運用のポイント

年俸制を導入する際は、次のような点を明確にしておきましょう。

  1. 年俸の中に含まれる残業代の時間数を明示する
     例:「年俸に月30時間分の時間外手当を含む」
  2. 実際の残業時間が超えた場合は、別途支払う
  3. 就業規則・雇用契約書に具体的に記載する

これらを整備しておけば、後から「そんな話は聞いていない」といったトラブルを防ぐことができます。

■ 年俸制は「便利」だけど「慎重さ」も必要

年俸制は、成果主義や人事評価と結びつけやすく、管理職層を中心に広く使われています。ただし、制度の運用を誤ると、思わぬ残業代トラブルにつながることもあります。

「年俸制=残業代なし」ではありません。

実情に合わせた“正しい年俸制”の設計をお手伝いしますので、制度導入や契約書の見直しを行う際は、ぜひご相談ください。

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