労災が起きたらどうする?“労働者死傷病報告”を忘れていませんか?
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
仕事中や通勤中のケガ・病気は、どんなに気をつけていてもゼロにはできません。
万が一、職場で労働者がケガをしたり、病気になったり、最悪の場合命を落としてしまった場合、「労働者死傷病報告(ろうどうしゃししょうびょうほうこく)」という書類を提出する必要があります。
「えっ?労災保険の手続きだけでいいんじゃないの?」
そんな声をよく聞きますが、この報告は労災申請とは別の義務なんです。
今回はこの「労働者死傷病報告」についてお話ししたいと思います。
■ 労働者死傷病報告とは?
労働安全衛生規則第97条に基づき、労働災害(業務中・通勤中のけがや病気など)が発生したときに、労働基準監督署へ報告する義務があります。
つまり、
「職場でけが人が出た」
「作業中に事故が起きた」
「業務による病気が発生した」
といった場合に、労働災害の発生状況を行政に報告するための書類です。
■ 報告が必要になるのはどんなとき?
労働者死傷病報告は、災害の程度によって報告の種類と期限が異なります。
【① 死亡や重傷災害が発生した場合】
→ すぐに報告(様式第23号)
死亡、休業4日以上のけがや病気、重大な事故(失明・手足の切断など)が起きた場合は、
速やかに所轄の労働基準監督署に提出します。
【② 軽いけが(休業4日未満)の場合】
→ 事故が発生した四半期の翌月末日までに報告(様式第24号)
「3日以内の休業」「通院のみ」のような軽いけがでも、3か月ごとにまとめて報告する義務があります。多くの会社ではこの報告を忘れがちですが、実はこれも法律上の義務です。
■ 労災申請と何が違うの?
よく混同されますが、
- 労災申請:労働者が給付(治療費や休業補償)を受けるための手続き
- 労働者死傷病報告:会社が行政に「災害が起きました」と報告する手続き
と、目的がまったく違います。
労災申請を出しても、**死傷病報告を出さなければ「報告義務違反」となります。最悪の場合、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります。
■ 提出先と提出方法
提出先は、事業場を管轄する労働基準監督署です。書面を持参・郵送するほか、最近では電子申請(e-Gov)でも提出が可能です。
用紙の様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
■ よくある質問
Q. 派遣社員がケガをした場合は?
A. 原則として「派遣先の事業場」で報告します。
実際に労働災害が発生した場所の事業主に報告義務があります。
Q. 休業日数はどう数えるの?
A. ケガをした「当日」を除き、実際に仕事を休んだ日数をカウントします。
Q. 報告しなかったらどうなる?
A. 法令違反として50万円以下の罰金が科される可能性もあります。
■ まとめ
労働者死傷病報告は、「何が起きたかを行政に知らせ、再発防止につなげるための重要な報告」です。
災害が起きたとき、どうしても目の前の対応や労災手続きに追われがちですが、報告義務を忘れずに行うことが会社の責任でもあります。
もし手続きの方法や判断に迷った場合は、相談ください。事実関係の整理や報告書作成のサポートを通じて、適正な対応をお手伝いします。


