「内定取り消し」は本当にできるの?企業が注意すべき法律とトラブル回避のポイント
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
今回は「内定取り消し」についてお話ししたいと思います。
採用活動の終盤、「この方を採用したい!」と内定を出す瞬間は、企業にとっても応募者にとっても嬉しい瞬間ですよね。
しかし、その後やむを得ない事情で「やっぱり内定を取り消したい」と考えるケースもあります。
例えば、
- 会社の経営状況が急変した
- 応募者の経歴に虚偽があった
- 健康上の理由で業務が難しいと判明した
などの理由が考えられます。ですが、「内定取り消し」は自由にできるものではありません。
誤った対応をすると、不当な内定取消として損害賠償請求を受けるリスクもあります。
内定は「始期付き・解約権留保付きの労働契約」
労働法上、内定通知=採用内定は、法的には労働契約の成立とみなされる場合があります。つまり、形式的にはまだ勤務が始まっていなくても、企業と応募者の間に雇用契約が成立しているとされるのです。
そのため、内定を取り消すことは、実質的には「解雇」に近い扱いになります。したがって、客観的に見て合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、取り消しは無効と判断される可能性が高いのです。
どんな場合なら内定取り消しが認められるの?
裁判例などから見ると、以下のようなケースでは「やむを得ない理由」として内定取消が認められることがあります。
- 応募書類や面接での経歴詐称があった場合
- 重大な犯罪行為など、社会的信用を著しく損なう事実が発覚した場合
- 健康状態が業務遂行に著しく支障を及ぼすと客観的に判断される場合
一方で、「経営が苦しくなった」「他に良い人が見つかった」などの理由では、ほとんどの場合、取消は認められません。
トラブルを防ぐための企業側の対策
内定取り消しは、慎重に対応すべきデリケートな問題です。トラブルを防ぐために、次のポイントを意識しましょう。
- 採用条件・内定通知書を明確にする
→ 採用日・条件・取り消しの可能性などを文書で示す。 - 健康診断や身元確認は早めに実施
→ 入社直前では対応が遅れることがあります。 - やむを得ず取り消す場合は、丁寧な説明と誠実な対応を
→ 応募者の立場に配慮し、書面で理由を明確に伝えることが大切です。
まとめ:内定取り消しは「最後の手段」
内定取り消しは、法律的にも心理的にも非常に重い決断です。
もし対応を誤れば、企業の信頼を損なうだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。
「このケースは取り消しても大丈夫だろうか?」と少しでも迷ったときは、早めにご相談ください。


