ダメ、絶対!「労災隠し」は重大な法違反!〜知らずにやっていませんか?〜
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
「けがをしたけど、大ごとにしたくないから会社で治療費を払っておくよ」「病院には“通勤中のけが”って言っておいて」
――これ、実は“労災隠し”と呼ばれる重大な法令違反にあたる行為です。
「うちは小さな会社だから」「本人も大ごとにしたくないと言っていた」
そんな理由では済まされません。
労災隠しは発覚すると、会社に対して刑事罰が科される可能性もあるのです。
今回は、経営者にも労働者にも知っておいてほしい「労災隠し」についてお話ししたいと思います。
■労災とは?
「労災(労働災害)」とは、仕事中や通勤中に起きたけが・病気・死亡などを指します。
労災が発生した場合、労働者は「労災保険(労働者災害補償保険)」によって治療費や休業補償を受けることができます。
会社は、労災が発生したときには遅滞なく労働基準監督署へ報告する義務があります。
■「労災隠し」とは?
労災隠しとは、本来報告すべき労働災害を、会社が故意に報告しなかったり、事実と異なる内容で届け出る行為をいいます。
たとえば、こんなケース。
- 現場でけがをしたが「自分で病院に行っておけ」と指示し、会社が報告しない
- 労災扱いにせず「健康保険」で治療を受けさせる
- 「自宅でけがしたことにして」と従業員に虚偽の申告をさせる
- 労災報告書に「休業なし」と虚偽の記載をする
これらはいずれも労災隠しに該当する可能性があります。
■労災隠しはなぜ問題なのか?
労災保険は、労働者を守るための公的な制度です。
会社が報告を怠れば、
- 労働者が本来受けられる補償を受けられなくなる
- 職場の安全対策が改善されない
という重大な問題が生じます。
さらに、労働基準監督署への報告義務を怠った場合、労働安全衛生法第120条により「50万円以下の罰金」が科されることがあります。
また、悪質な場合は、労働基準監督署による企業名の公表や、再発防止指導などの行政処分を受けることもあります。
■「従業員が希望したから」は通用しません
よくある誤解が「本人が労災にしたくないと言ったから」というケースです。
しかし、労災の届出は会社の義務であり、従業員が希望しなくても、会社は報告しなければなりません。
また、会社が「本人の希望」を理由に届け出をしなかった場合、その行為は労災隠しとして処罰の対象になる可能性があります。
■労災が起きたら、どうすればいい?
万が一、職場でけがや事故が起きた場合は、まずは労働者の救護を最優先に行い、その後すぐに監督署への報告準備をしましょう。
報告の際には、
- どんな作業中に発生したのか
- どんなけがをしたのか
- どれくらい休業が必要なのか
を正確に記載することが大切です。
また、再発防止のための安全対策を社内で共有・実施することも欠かせません。
■まとめ:誠実な対応が企業の信頼を守る
労災隠しは「小さなごまかし」ではなく、重大なコンプライアンス違反です。一度発覚すると、会社の信用は大きく損なわれ、従業員の士気にも悪影響を及ぼします。
一方で、正しく報告し、誠実に対応することは、「従業員を大切にする会社」という信頼を築く第一歩です。
もし「これって労災になるの?」「報告した方がいいの?」と迷ったら、すぐにご相談ください。届出のサポート、安全衛生体制の整備まで、実務的に支援いたします。


