仕事を休んでも収入ゼロじゃない!? 「傷病手当金」とは?
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
「病気で長く会社を休むことになったけど、お給料が出ない…」「入院したら生活費はどうしよう?」等
休職中の収入の心配をされる方も多いのではないでしょうか。
そんなときに頼りになるのが、健康保険の制度のひとつ、「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」です。
病気やケガで働けなくなったとき、生活を支えてくれる非常に重要な制度です。
でも、「誰がもらえるの?」「どのくらいの金額が出るの?」といった疑問を持つ方も多いはず。
今回は、休職中の生活補償「傷病手当金」についてお話ししたいと思います。
■傷病手当金とは?
傷病手当金とは、仕事以外の病気やケガで働けなくなったときに支給されるお金のことです。
例えば、
- インフルエンザで長期間休む
- 交通事故で入院する
- うつ病など精神的な不調で療養する
といったケースが対象になります。
一方、仕事中や通勤中のケガは「労災保険」の対象になりますので、区別が必要です。
■もらうための4つの条件
傷病手当金を受け取るには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガであること
- 仕事ができない状態であること(医師の証明が必要)
- 連続して3日間休み、4日目以降も働けないこと(待機期間)
- 休んでいる期間に給与の支払いがないこと
この「待機期間」はポイントです。
最初の3日間は支給されず、4日目からが支給対象となります。
■支給される金額と期間
支給額は次のように計算されます。
1日あたりの支給額 = 過去12か月の標準報酬月額平均額÷30 × 2/3
つまり、ざっくり言えば給与の3分の2程度が支給されます。
支給される期間は、最長1年6か月。
同じ病気やケガであれば、途中で復職した後に再び休んでも、その期間内であれば再支給されます。
■退職後ももらえる場合がある!
あまり知られていませんが、退職後でも条件を満たしていれば傷病手当金を受け取ることができます。
たとえば、退職時にすでに休職していて、健康保険の資格喪失日までに要件を満たしている場合、退職後も引き続き支給されます。
【東京地裁 平成27年判決】では、うつ病で休職していた社員が退職後に傷病手当金を請求したケースで、
「退職前に労務不能状態にあり、要件を満たしていれば支給対象になる」と判断されました。
つまり、退職=即終了ではないのです。
■申請の流れ
申請は次のように行います。
- 医師に「労務不能の証明」を記入してもらう
- 会社に勤務・給与の証明を記入してもらう
- 健康保険組合や協会けんぽに申請書を提出
退職後の申請は事業主の証明は不要です。
■こんなときは注意!
- 会社から一部でも給与が支払われていると、支給額が減る場合があります。
- 自己都合で休んだ場合(私用休暇など)は対象外です。
- アルバイトや副業などで収入があると、支給が制限されることもあります。
「自分のケースは対象になるの?」と迷ったら、早めに確認することが大切です。
■まとめ
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに生活を守るための大切な制度です。
支給の条件や期間、金額などを正しく理解しておくことで、万が一のときに慌てずに済みます。
当事務所では、傷病手当金の申請サポートや、休職・復職時の労務対応なども行っています。
お気軽にご相談ください。


