「休職」~従業員が働けなくなったとき、会社はどう対応すべきか~
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
最近はメンタル不調で休職を余儀なくされる方が少なくありません。
「うつ病でしばらく働けない」「けがの治療で長期間休ませてほしい」
こんな時どうしますか?
今回は「休職制度」についてお話ししたいと思います。
休職とは、従業員が病気やけが、あるいは家庭の事情などで一定期間働けない場合に、雇用関係を保ったまま会社を休む制度です。
退職ではなく「職場復帰を前提としたお休み」という位置づけになります。
■ 休職制度は法律に明記されていない?
意外に思われるかもしれませんが、休職制度については労働基準法に直接の定めがありません。
そのため、各企業が就業規則の中で「どんな場合に休職できるのか」「休職期間はどのくらいか」を定める必要があります。
一般的には、次のようなケースで休職が認められます。
- 病気やけがにより長期療養が必要な場合(私傷病休職)
- 懲戒処分の一環としての休職(懲戒休職)
- 会社都合による業務停止など(業務上休職)
このうち最も多いのが「私傷病休職」です。
■ 【事例①】メンタル不調で出社できなくなった社員
ある事務職の社員が、過労と人間関係のストレスによりうつ病を発症し、医師から「数か月の療養が必要」と診断されました。
会社は就業規則に基づき、6か月間の休職を認めました。
休職中は、会社から給与の支払いは行われませんが、健康保険の「傷病手当金」によって給与の約3分の2が支給されます。
定期的に会社と連絡を取りながら、産業医や主治医の意見を踏まえて復職を検討していきました。
このように、休職制度は従業員の生活を支えつつ、会社としても雇用関係を維持できる仕組みです。
ただし、期間満了後も回復の見込みがない場合には、退職(自然退職)となることもあります。
■ 【事例②】休職制度がなくトラブルになったケース
一方で、就業規則に休職の定めがなかった製造業のA社では、交通事故で長期入院した社員に対し、「長く休むなら辞めてもらうしかない」と伝えたところ、
「不当解雇だ」と労働基準監督署に相談が入り、結果的にトラブルになりました。
このケースでは、休職制度が整備されていなかったことが原因でした。
法律で定められていないからこそ、会社がルールを明文化しておく必要があるのです。
明確な基準があれば、従業員も安心して療養に専念でき、会社側も適正な判断ができます。
■ 休職制度を整備するときのポイント
休職制度を設ける際は、次のような項目を就業規則に明記しておきましょう。
- どのような場合に休職を命じるか(例:業務外の病気・けが等)
- 休職期間の長さ(例:勤続年数に応じて3か月~1年など)
- 休職中の給与や社会保険の扱い
- 復職の判断方法(医師の診断書や面談による)
- 期間満了後に復職できない場合の取り扱い(自然退職等)
これらを明文化しておくことで、休職に関するトラブルを未然に防げます。
■ まとめ
「休職」は、従業員を守ると同時に、会社を守る制度でもあります。
制度が整っていないと、対応のたびに迷いが生じ、トラブルにつながることもあります。
もし自社の就業規則に休職の定めがない、または内容が古い場合は、早めの見直しをおすすめします。
従業員が安心して療養・復帰できる環境づくりをしていきましょう。


