中小企業経営者が注意すべき「管理監督者」の落とし穴

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

「うちの店長は管理職だから残業代は出していない」「部長職だから労働時間の管理はしていない」

そんなことを耳にしたことはありませんか?

しかし、労働基準法上の『管理監督者』は、肩書きだけで判断できるものではありません。

実際には「管理監督者のつもりだったが、法律上は一般社員扱い」とされ、未払い残業代を請求されるケースが増えています。

ということで今回は「管理監督者」についてお話ししたいと思います。

■ 管理監督者とは?

労働基準法では、管理監督者は「労働時間・休憩・休日の規定の適用を受けない」立場です。

つまり、残業代や休日手当を支払う必要がない特別な人という扱いです。

ただし、裁判例では次のような条件を満たさない限り、管理監督者とは認められません。

  1. 経営に関与し、経営者と一体的な立場で職務を行っていること
  2. 出退勤の裁量があり、労働時間の管理を受けていないこと
  3. 職責に見合った十分な待遇(給与・手当)を受けていること

この3点がそろわない場合、肩書きが「店長」「部長」でも法律上は管理監督者ではなく、残業代を支払う必要があります。

■ 【事例①】名ばかり店長の残業代請求

ある飲食店で「店長職=管理監督者」として残業代を払っていませんでした。

ところが、営業時間やシフトはすべて本部が決定し、店長には決定権がほとんど無く、給与もアルバイトより少し多い程度。

裁判では「実態として一般社員と変わらない」と判断され、過去2年分の残業代約300万円の支払いが命じられました。

経営者として「店長だから大丈夫」と思っていたことが、思わぬ負担となったのです。

■ 【事例②】部長職でも認められなかったケース

製造業の部長が「自分は管理職だから残業代は出ない」として勤務していましたが、実際には勤務時間の裁量がなく、最終決定権も社長にありました。

給与も一般社員と大きな差がなかったため、裁判では「形式的な役職にすぎない」とされ、未払い残業代の支払いが命じられました。

■ トラブルを防ぐために

中小企業では、管理職が「プレイングマネージャー」として現場業務を兼ねることが多く、法的な「管理監督者」には当たらないケースが大半です。

そのため、残業代の対象になることを前提に労働時間を管理するのが安全策です。また、誤解を避けるためにも、就業規則で職務権限を整理し明文化しておきましょう。

「管理職=残業代なし」という一律の考え方は、今後ますますリスクが高まります。

■ まとめ

「管理監督者」は実はとても誤解されやすい言葉です。役職名ではなく、「実際の仕事内容・権限・待遇」で判断しましょう。

誤った運用は、高額な残業代請求や労働基準監督署の是正勧告につながりかねません。

御社の管理職について一度現状を確認してみてはいかがでしょうか。

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