固定残業代ってなに?~導入時の注意点~
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
求人票などで「月給25万円(固定残業代3万円・20時間分を含む)」といった表記を目にしたことはありませんか?
この「固定残業代制度(みなし残業制度)」は、企業でも多く導入されていますが、正しく理解しないと「未払い残業」としてトラブルになるケースが少なくありません。今回は、「固定残業代の基本と注意点」についてお話ししたいと思います。
■ 固定残業代とは?
固定残業代とは、「あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度」です。
たとえば「月給25万円(うち固定残業代3万円/20時間分を含む)」とあれば、毎月の給与の中に“20時間分の残業代”が含まれているという意味です。
実際の残業が20時間以内であれば追加支払いは不要ですが、20時間を超えた場合はその超過分を別途支払う必要があります。
■ 固定残業代の導入には明確なルールがある
固定残業代を導入する際には、法律で定められたルールを守る必要があります。
特に次の3つのポイントが重要です。
- 固定残業代の金額と時間数を明示すること
→「基本給」と「固定残業代」を明確に区分し、「○時間分の残業代として○円を支払う」と契約書などに記載する必要があります。 - 固定残業代の計算根拠が合理的であること
→法定の割増率(通常1.25倍など)を用いて、妥当な時間数で設定しなければなりません。極端に多い時間数を固定するのはトラブルのもとです。 - 超過分の残業代を必ず支払うこと
→固定残業時間を超えて働いた場合、その超過分の残業代は必ず追加で支払う義務があります。
これらを守っていない場合、固定残業代の部分が無効とされ、「全ての残業代を別途支払うように」と指摘される可能性があります。過去にさかのぼって請求されるケースもあり、企業にとっては大きなリスクです。
■ よくある誤解とトラブル
「固定残業代を払っているから残業時間は関係ない」と誤解しているケースが見られますが、これは大きな間違いです。
労働時間の管理は必須であり、実際の残業時間が固定残業時間を超えていないか確認する必要があります。
また、求人票や面接で「残業代はすべて込みです」とだけ説明するのもNGです。内容を明確に伝えなければ、採用後に「話が違う」とトラブルになることもあります。
■ 適切な運用のために
固定残業代を正しく活用するためには、
- 契約書に明確な記載をすること
- 実労働時間をきちんと管理すること
- 社員にも仕組みをわかりやすく説明すること
が欠かせません。
制度を整えることで、会社も社員も安心して働ける環境をつくることができます。
■ まとめ
固定残業代は、うまく運用すれば給与計算をシンプルにし、予算管理もしやすい制度です。
しかし、法律のルールを守らずに導入すると、「未払い残業代請求」といった思わぬトラブルに発展するリスクもあります。
導入や見直しを検討する際は、自社に合った形で制度設計を行うことをおすすめします。


