インフルエンザで出勤停止…休業手当は出る?出ない?会社都合の判断ポイント
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
冬場を中心に流行するインフルエンザ。従業員が感染した場合、会社としては感染拡大防止の観点から出勤停止を命じることがあります。では、この場合「休業手当」は必要なのでしょうか。
判断のポイントは、その休業が誰の責任によるものかという点にあります。
■ 法的根拠は労働基準法第26条
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、会社は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないと定めています。
つまり、会社の都合で休ませる場合は、一定の補償が必要になるということです。
⸻
■ ケース別に考える
① 医師が「就業不可」と判断している場合
インフルエンザと診断され、医師から「〇日間は自宅療養」と指示が出ている場合、従業員は労務提供ができない状態と考えられます。
この場合は労働者側の事情による欠勤となり、原則として休業手当の支払い義務はありません。
実務上は、
・年次有給休暇の取得
・会社独自の特別休暇制度
・健康保険の傷病手当金
などで対応することが一般的です。
⸻
② 本人は働けるが、会社が一律に出勤停止を命じた場合
一方で、すでに症状が軽快し、医師からも特段の就業制限がない場合であっても、会社が「感染拡大防止のため」として出勤停止を命じるケースがあります。
この場合はどうでしょうか。
従業員が労務提供可能であるにもかかわらず、会社側の判断で就労を拒んでいる状態であれば、会社都合の休業に該当する可能性が高くなります。
その結果、労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要になることがあります。
⸻
■ 実務で重要な「判断ポイント」
実際のトラブルは、次の点が曖昧なことから生じます。
・医師の診断内容はどうなっているか
・就業制限の有無
・就業規則に出勤停止規定はあるか
・本人は実際に働ける状態か
特に重要なのは、「労務提供が可能かどうか」です。
ここが明確でないまま「一律自宅待機」としてしまうと、後に会社都合休業と判断されるリスクがあります。
⸻
■ 企業が取るべき実務対応
感染症対応では、法的整理だけでなく、職場全体の安全配慮義務とのバランスも重要です。
企業としては、
・就業規則に感染症対応の規定を整備する
・医師の意見書を確認する
・休業手当の取扱いを明文化する
・有給休暇や特別休暇制度を活用する
といった事前のルール整備が不可欠です。
場当たり的な判断は、労使トラブルの火種になります。
⸻
■ まとめ
インフルエンザによる出勤停止でも、
• 医師が就業不可と判断 → 原則、休業手当不要
• 働けるのに会社が止めた → 会社都合となる可能性あり
という整理になります。
感染症対応は、感情論ではなく法的根拠に基づいた判断が求められます。
貴社の就業規則や運用が適切かどうか、一度点検してみてはいかがでしょうか。当事務所では、感染症対応規程の整備や休業手当の判断に関するご相談も承っております。お気軽にご相談ください。


