令和8年4月からの主な制度変更 ― 企業が押さえるべき実務対応
令和8年4月から、労働・社会保険分野において複数の重要な制度改正が施行されます。今回の改正は、単なる数字の変更にとどまらず、「安全配慮の強化」「情報公開の拡大」「多様な働き方への対応」が大きな柱となっています。
本記事では、企業実務に直結するポイントを分かりやすく整理します。
1.労働安全衛生法の改正ポイント
■ 高年齢労働者の労働災害防止措置が努力義務に
高年齢労働者の増加を背景に、身体機能の変化を踏まえた安全対策が努力義務化されます。
具体的には、
- 作業内容の見直し
- 転倒防止対策
- 身体負荷軽減措置
- 健康状態の把握と配慮
などが求められます。
高齢者雇用が当たり前の時代において、安全管理の水準は企業評価にも直結します。
■ 個人事業者等への安全衛生対策の拡大
混在作業現場において、元方事業者の措置義務対象が拡大されます。
請負・委託・フリーランス等との取引がある企業は、労災リスク管理の再点検が必要です。
■ 化学物質管理の強化
営業秘密である成分についても、代替化学品名の通知が求められるなど、情報伝達の透明性が強化されます。
SDS(安全データシート)管理体制の整備が重要になります。
2.女性活躍推進法の改正
今回の改正で特に影響が大きいのは、常時雇用労働者101人以上の企業です。
■ 女性管理職比率の公表義務化
これまで義務ではなかった女性管理職比率の公表が義務付けられます。
■ 男女間賃金差異の公表対象拡大
男女間賃金差異の公表義務は、従来の301人以上企業から101人以上企業へ拡大されます。
情報公表は「義務」であると同時に、「採用戦略」「企業ブランディング」にも直結します。数値の算出方法、説明方法の整理が急務です。
■ えるぼし認定制度の見直し
女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定制度」に、女性の健康課題にも取り組む企業向けの「プラス認定」が創設されます。
認定基準の見直しも予定されており、取得を目指す企業は早期の体制整備が必要です。
3.治療と就業の両立支援(労働施策総合推進法)
これまでガイドラインだった両立支援が「指針」に格上げされ、企業には両立促進措置が努力義務として求められます。
がん治療、精神疾患、慢性疾患など、長期療養と仕事の両立は今後さらに重要課題になります。
- 両立支援規程の整備
- 相談窓口の明確化
- 主治医との情報連携体制
といった仕組みづくりが望まれます。
4.年金・雇用保険等の改正
■ 在職老齢年金の支給停止調整額引上げ
厚生年金保険法の改正により、在職老齢年金の支給停止調整額が
51万円 → 65万円 に引き上げられます。
高年齢者の就労インセンティブが高まり、人材活用の幅が広がる可能性があります。
■ 雇用保険料率の改定
雇用保険法に基づく令和8年度の一般事業の保険料率は、
1.45% → 1.35%(労使合計) に引き下げ予定です。
企業負担の軽減につながりますが、給与計算ソフトの料率設定変更を忘れないよう注意が必要です。
5.その他の注目改正
■ 企業型DCのマッチング拠出上限撤廃
確定拠出年金法の改正により、企業型DCのマッチング拠出上限が撤廃されます。
福利厚生制度の魅力向上につながるため、制度設計の見直しも検討材料となります。
■ 子ども・子育て支援金の創設
子ども・子育て支援法に基づき、新たな支援金制度が創設されます。
社会保険料負担への影響も含め、今後の詳細に注目が必要です。
まとめ ― 「義務拡大」と「努力義務強化」の時代へ
令和8年4月改正の特徴は、
- 情報公表義務の拡大
- 高年齢者・治療中労働者への配慮強化
- 安全衛生管理の実効性向上
にあります。
単に法令を守るという視点だけでなく、
✔ 採用力強化
✔ 人材定着
✔ リスク管理
✔ 企業価値向上
といった経営戦略の観点で捉えることが重要です。
101人以上規模の企業様は特に早めの準備が必要です。
制度改正は「対応するもの」ではなく、「活用するもの」です。
具体的な社内規程整備、情報公表準備、数値算定方法の確認などについては、専門家と連携しながら計画的に進めていきましょう。
ご不明点や自社への影響確認につきましては、お気軽にご相談ください。

