企業が負う安全配慮義務の重み

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

先日、倉敷労働基準監督署は、粉じん対策用の防じんマスクを使用させずに労働者へアーク溶接作業を行わせたとして、倉敷市内の金属加工会社および同社代表取締役を岡山地方検察庁倉敷支部へ書類送検しました。

報道によれば、問題となったのは金属のアーク溶接作業です。アーク溶接では高温で金属を溶かす過程でヒューム(溶接ヒューム)や粉じんが発生します。これらを長期間吸入すると、じん肺や呼吸器疾患、金属中毒などの健康障害を引き起こすおそれがあります。

労働安全衛生法の基本的な考え方

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保することを目的とした法律です。事業者には、危険や健康障害のリスクを把握し、必要な措置を講じる義務が課されています。

特に粉じん作業については、粉じん障害防止規則により、次のような措置が求められます。

・局所排気装置などによる作業環境の改善

・作業環境測定の実施

・適切な防じんマスク(呼吸用保護具)の使用

・特別教育の実施

・健康診断の実施

アーク溶接は典型的な粉じん作業に該当します。そのため、事業者が労働者に対して防じんマスクを「使用させる」義務があるのです。単に「用意していた」では足りず、実際に着用させる管理まで求められます。

書類送検が意味するもの

今回のようなケースでは、会社だけでなく代表者個人も責任を問われます。労働安全衛生法違反には罰金刑などの罰則が定められており、刑事責任の対象となります。

さらに、行政指導や是正勧告だけでなく、企業イメージの毀損、取引先からの信用低下、採用への悪影響など、経営面へのダメージも小さくありません。

「知っていた」では足りない時代へ

近年、溶接ヒュームは特定化学物質に位置付けられるなど、規制は強化されています。現場任せにせず、会社としてリスクアセスメントを行い、適切な保護具の選定・フィットテスト・着用管理を徹底することが求められています。

「忙しいから」「短時間だから」「ベテランだから大丈夫」――こうした油断が重大な法違反につながります。

企業として今すぐ確認すべきポイント

・粉じん作業の有無を把握しているか

・適切な防じんマスクを選定しているか

・着用状況を管理監督者が確認しているか

・特別教育や健康診断を実施しているか

・安全衛生管理体制は整備されているか

労働災害は「起きてから」では遅いものです。安全対策はコストではなく、企業存続のための投資です。

当事務所では、労働安全衛生体制の点検、規程整備、教育体制構築のサポートを行っております。今回の事例を他山の石とし、自社の安全管理体制を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

従業員の命と健康を守ることこそ、企業経営の根幹です。

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