事業譲渡で転籍を打診…辞めた従業員の離職理由はどうなる?

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

最近、事業譲渡や事業縮小などの話を聞く機会が増えてきましたが、それに伴い従業員へ「転籍」の提案を行うケースもが増えています。しかし、転籍は同一法人内の配置転換とは異なり、現在の会社を一度退職し、別法人へ入社するという大きな身分変更を伴います。そのため、必ず本人の同意が必要です。

では、会社が転籍を提案した結果、従業員が「それなら辞めます」と退職を選択した場合、離職理由は「自己都合」になるのでしょうか?それとも「会社都合」になるのでしょうか?
今回は、その判断ポイントについてお話ししたいと思います。

■転籍の提案が「実質的に断れない」場合は会社都合になる可能性が高い

労働法の考え方では、従業員が自由な意思で退職を選んだ場合は自己都合退職となります。しかし、会社から転籍を提案したものの、実際には“転籍を断ると働き続けることができない”ような状況であれば、従業員は実質的に退職を選ばざるを得ないと判断されます。

このようなケースでは、内容としては 整理解雇や退職勧奨に近い と評価されるため、雇用保険上の離職理由は「会社都合」と判断される可能性が非常に高くなります。


■事例

介護事業が別法人へ譲渡され、そのために介護士の従業員へ転籍を提案している状況で

従業員からは
「譲渡先に転籍するくらいなら辞めたい」
という声が上がっている一方で、転籍を拒否して現法人に残ったとしても、他職種(建設作業員・飲食店員など)での業務が難しく、事実上働き続けられない状況とのこと。

このように、
• 転籍を断っても現法人で従来の職務に就くことができない
• 他の職務も現実的に担当できない
となれば、退職の選択は本人の自由とは言い難く、実質的に「退職せざるを得ない状況」 と判断されます。

そのため、このケースでは 会社都合退職となる可能性が高い と考えられます。

■「自己都合」になるケースは?

一方、転籍を断っても 現法人で働き続ける選択肢が現実的に存在する 場合は、退職は従業員自身の選択と考えられ、自己都合退職となる可能性が高くなります。

たとえば
• 転籍を断っても同じ職種での就業が可能
• 別職種でも、希望すれば配属が可能
という場合です。

要するに、退職せずとも働き続ける現実的なルートがあれば、自己都合になります。

■まとめ:重要なのは「従業員が自由に選べる状況だったか」

転籍が関わる退職の判断ポイントはシンプルです。

従業員が、転籍する・しない・現職に残る、の選択を本当に自由にできたか?
• 自由に選べた → 自己都合
• 実質的に選べなかった → 会社都合

事業譲渡・事業縮小などが関わる場合、会社都合になるケースは少なくありません。誤った離職理由で手続きを行うと、後々トラブルになることもあります。

■転籍や離職理由の判断で迷ったら、専門家へご相談を

転籍に伴う労務対応は、事業譲渡の手続き・労働契約の承継・本人同意の取り扱いなど、専門性の高いポイントが多く含まれます。

「会社都合か自己都合か判断が難しい」
「従業員説明をどうすべきかわからない」

このような場面では、ぜひ当事務所へご相談ください。適切な手続きと丁寧な説明が、従業員との信頼関係を保ちながらスムーズな移行を進めるための鍵となります。

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