オーストリアと24ヶ国目の「社会保障協定」 海外転勤・駐在が多い企業は要チェック!社会保障協定とは?

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

先日、2025年12月1日に日本とオーストリアとの間で新たに社会保障協定が発効することが報じられました。
この協定により、日本企業が社員をオーストリアへ一時的に派遣する際の 年金保険料の二重払いが解消 され、両国の年金加入期間を 通算 して受給資格を確保できるようになります。

日本が社会保障協定を結ぶのはこれで24カ国目。
日本企業の海外展開が進むなか、このような協定の重要性はますます高まっています。

とはいえ、「社会保障協定って何?」という方も多いかもしれません。
そこで今回は、「社会保障協定」についてお話ししたいと思います。

■ 社会保障協定とは?

社会保障協定とは、日本と特定の国の間で結ばれる、年金などの社会保険に関する国際的なルールの取り決めです。

海外で働く際に起こる「年金の二重払い」や「受給資格が得られない」という問題を防ぐために設けられています。国際的に働く人にとっての“安全網”のような役割を果たしています。

■ 社会保障協定が解決する2つの大きな問題

① 年金の「二重払い」を防ぐ

通常、日本企業が社員を海外に派遣すると、
• 日本の年金はそのまま加入
• 派遣先の国でも加入義務が発生

というケースがあり、企業と社員が2つの国へ保険料を払わなければならない場合があります。

社会保障協定がある国への派遣であれば、原則として、どちらか一方の国の年金にのみ加入すればよくなり、二重払いが解消されます。

企業のコスト・社員の負担がどちらも大きく軽減されます。

② 年金の受給資格を確保しやすくなる

日本の年金受給には「10年以上の加入」が必要ですが、海外でも国によって加入期間の要件はまちまちです。

短期的に海外へ赴任した場合、
• 日本で8年
• 海外で4年

のように、どちらの国でも受給資格を満たせなくなるケースがあります。

社会保障協定があると、両国で加入していた期間を“通算”して受給資格を満たせるようになります。

※受給する年金額は、それぞれの国に加入していた期間に応じて別々に支給されます。

■ 協定があると、こんなメリットが

● 企業の負担が大幅に減る

海外派遣に伴う年金保険料の負担が軽くなります。

● 海外赴任者の将来の不安を解消

「年金がもらえなくなるのでは?」という不利益リスクがなくなります。

● 国際的なキャリア形成がしやすい

複数の国で働くことが一般的になった現代において、とても重要な仕組みです。

■ 協定国は今後も広がる見通し

今回のオーストリアとの発効により、日本が協定を結ぶ国は24カ国となりました。
欧米・アジア・中南米など幅広く拡大しており、海外赴任者にとってより働きやすい環境が整いつつあります。

ただし、二重払いの対象外になる条件や、派遣期間の上限、必要な「加入証明書」など、実務には国ごとに細かなルールがあり、専門的な判断が求められます。

■ 海外赴任を予定している企業さまへ

社会保障協定は、海外赴任者の不利益を防ぎ、企業の負担を軽減するための非常に重要な制度です。
しかし、手続きや適用条件には多くの注意点があります。

当事務所では、海外派遣に伴う社会保険の取り扱い・加入手続き・協定国のルール確認など、企業さまのご相談を幅広く承っております。

海外に社員を派遣する予定がある企業担当者さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

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