その1分、見逃していませんか?残業時間は“1分単位”でカウントが原則!

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

残業時間の管理について「うちは5分未満の残業は切り捨ててるから大丈夫」「15分単位でまとめて計算してるよ」

そんな声を耳にすることがあります。

しかし実は――このやり方、法律上は認められない可能性が高いのです。

今回は、「残業は1分単位でカウントすべきなのか?」について、お話ししたいと思います。

■労働時間は「1分単位」で把握・管理するのが原則

労働基準法では、労働時間を「実際に労働者が使用者の指揮命令下で働いている時間」と定義しています。

このため、労働時間は1分単位で正確に記録・管理するのが原則です。

「5分未満切り捨て」や「15分単位に丸めて計算」といったやり方は、実際に働いた時間に対して正しい賃金を支払っていないことになり、結果として「未払い残業」と判断されるリスクがあります。

■【判例紹介】日本郵便事件(東京高裁・令和3年2月)

この事件では、郵便局で働く社員が「着替えや準備作業の時間が労働時間にあたる」として、未払い残業代を求めた事案です。

裁判所は、実際に使用者の指揮命令下で行われている準備や片付けの時間は労働時間に該当すると判断しました。

つまり、「わずかな時間」であっても、会社の指示や業務上必要な作業であれば労働時間として扱うべきという考え方が確立しています。

この判決は「1分単位の正確な勤怠管理が必要」という実務の方向性を裏づけています。

■“端数処理”が認められるのはごく一部だけ

もっとも、厚生労働省の通達では、**1か月単位で集計した後の端数処理(30分未満切り捨てなど)**であれば、一定の条件のもとで認められています。

ただし注意点があります。

それは「労働者に不利益がない場合」に限られるということ。

たとえば、1日の労働時間を切り捨てるような運用は完全にNGです。

「1か月分の残業時間を合計した結果、わずかな端数が出た場合のみ」処理が認められるという非常に限定的な例外なのです。

■トラブルを防ぐための実務ポイント

労働時間の管理を正しく行うためには、次の点を押さえましょう。

  • 打刻の時間=労働時間とは限らない
     始業前や終業後に私的な準備・片付けがある場合は除外できるケースもあります。
     ただし、その判断は慎重に行う必要があります。
  • 勤怠システムの設定を確認する
     「自動で5分単位に丸める」設定がされているシステムもあるため、
     導入後の設定確認が大切です。
  • 就業規則・労使協定でルールを明確に
     「何を労働時間とするか」「どの時点を打刻基準にするか」を明文化しておくと安心です。

■まとめ

労働時間は、原則として実際に働いた時間を1分単位でカウントすることが必要です。

「数分だから大丈夫」と思って処理していると、のちに未払い残業として大きな金額を請求されるリスクもあります。

働いた時間を正確に記録・管理し、適切な賃金を支払うことは、従業員との信頼関係を築くうえでも非常に大切です。ぜひ一度、勤怠管理や就業規則の内容を見直してみましょう。

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