その5分は仕事のうち?着替え時間は“労働時間”になるのか?判例でチェック!
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。
今回は「着替え時間は労働時間か?」についてお話ししたいと思います。
日常の素朴な疑問ですが、実はこの“着替え時間”をめぐって、過去に多くの裁判で争われてきました。
結論から言うと、着替えの時間が「労働時間」にあたる場合と、あたらない場合があります。
ポイントは、「会社の指示や業務上の必要性」があるかどうかです。
■労働時間の基本的な考え方
労働基準法上の「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
つまり、上司の指示に従って行動している時間や、会社のルール上、自由に行動できない時間は「労働時間」にあたります。
では、制服への着替えはどうでしょうか?
■【判例紹介】三菱重工長崎造船所事件(最判 平11.3.9)
この有名な判例では、作業服への着替えや保護具の装着時間について争われました。
裁判所は次のように判断しています。
「作業服の着用が業務上不可欠であり、会社の指示により所定の場所で行う場合は、その着替え時間は労働時間にあたる。」
つまり、
- 安全上の理由などで会社が着替えを義務付けている
- 会社指定の更衣室で行う必要がある
こういった場合は、着替え時間も労働時間とみなされるということです。
逆に、
- 制服を自宅で着て出勤できる
- 私服通勤も可能で、着替えは本人の任意
このようなケースでは、着替え時間は労働時間とは認められにくくなります。
■企業としての対応ポイント
着替え時間が労働時間に含まれるかどうかは、就業規則や運用次第で変わります。
そのため、以下の点を明確にしておくことが重要です。
- 制服着用の義務の有無を就業規則に明記する
- 更衣や準備のための時間が発生する場合は、勤務時間に含める
- 打刻のタイミング(更衣前・後)を明確にする
たとえば、工場や病院などでは、始業前に更衣や安全チェックの時間が必要になります。
その分を勤務時間に含めていないと、「未払い残業」と指摘される恐れがあります。
■まとめ
着替え時間が労働時間になるかどうかは、「会社の指示」「業務上の必要性」「場所の指定」があるかがカギです。
たとえ数分の差であっても、積み重なればトラブルにつながる可能性があります。
「うちは大丈夫かな?」と思ったら、就業規則や勤怠管理方法を一度見直してみることをおすすめします。


