「休憩の3原則」とは? ~深夜労働・交代制勤務での正しい運用ポイント~
皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です
今回は「休憩」についてお話ししたいと思います。
「忙しくて休憩を取るタイミングがない」
「夜勤のときはいつ休憩にしていいかわからない」
そんなお悩みを耳にすることがあります。
実は、休憩は単なる“お昼休み”ではなく、労働基準法で明確にルールが定められた大切な権利です。
違反すると是正勧告や残業代請求のリスクもあるため、会社として正しく理解しておく必要があります。
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■ 休憩の3原則
労働基準法第34条では、次の「3つの原則」を定めています。
① 途中付与の原則
休憩は労働時間の「途中」に与えなければなりません。
出勤前や退勤後に休ませても休憩とは認められません。
たとえば「午前9時〜午後6時勤務」であれば、午後12時〜13時など、実際に働く途中に休憩を与える必要があります。
特に、昼食時間を取れずに8時間連続で勤務するような場合は、法令違反となります。
② 一斉付与の原則
原則として、事業場の全員が同じ時間帯に休憩を取らなければなりません。
ただし、交代制勤務や接客業などで全員同時に休めない場合、労使協定(いわゆる一斉休憩の例外)を結べば交代での休憩も可能です。
例:コンビニ・工場・コールセンターなど、常時誰かが対応しなければならない職場では、この協定が非常に重要です。
③ 自由利用の原則
休憩時間は労働者が自由に使える時間でなければなりません。
電話番や来客対応、掃除や軽作業などを命じてしまうと、実質的には労働時間となります。
「お昼休み中もレジを見ていて」といった指示は要注意です。
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■ 深夜労働・交代制勤務での注意点
深夜勤務や交代制勤務の現場では、休憩の取り方に特に注意が必要です。
• 深夜勤務(例:22時~翌7時)
この場合も、労働時間が8時間を超えるなら1時間以上の休憩を途中で取る必要があります。
「午前2時〜3時」など、比較的業務が落ち着く時間帯に設定するのが一般的です。
• 交代制勤務の場合
機械の稼働やサービス提供を止められない業種では、交代で休憩を取る体制を明確に定めることが重要です。
「労使協定で交代制の休憩運用を定める」「シフト表に休憩時間を明記する」ことで、後々のトラブルを防げます。
• 仮眠時間との違いに注意
夜勤中の「仮眠時間」は、自由に外出や電話を取らない完全な自由時間であれば休憩として扱えます。
しかし、呼び出しに応じる義務がある場合は「労働時間」とみなされます。
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■ 事例:夜勤の休憩トラブル
介護施設F社では、夜勤職員が「利用者対応のため休憩を取れなかった」と訴え、残業代の支払いを求めるトラブルが発生しました。
実際には「仮眠室を設けていたが、呼び出しが頻繁だった」ため、労働基準監督署はその時間を労働時間と判断。
結果、会社は休憩時間が適正でなかったとして是正勧告を受けました。
このように、形式的に「休憩時間を設けている」だけでは不十分で、実質的に自由に休める環境かどうかが問われます。
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■ まとめ:ルールを守って働きやすい職場へ
休憩の3原則は、「労働者の健康と安全を守るための最低限のルール」です。
忙しい職場ほど、「どうやって確保するか」を工夫することが大切です。
当事務所では、交代制勤務や夜勤を行う事業所向けに、
• 労使協定の作成支援
• 就業規則の見直し
• 休憩時間の運用に関するアドバイス
などを行っています。
「夜勤中の休憩をどう取ればいい?」「シフト勤務の休憩ルールが曖昧で不安」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
法律に沿った休憩運用が、従業員の安心と企業の信頼を守ります。


