振替休日と代替休日―違いを正しく理解していますか?

皆様こんにちは。社会保険労務士の岩竹です。

今回は「振休」と「代休」についてお話ししたいと思います。

休日出勤を命じた際に「振替休日を与えるから大丈夫」「代替休日で調整すれば問題ない」といった言葉を耳にすることがあります。しかし、この2つの休日は似ているようで、法律上の意味や扱いが大きく異なります。誤った運用をすると、知らないうちに「残業代の未払い」が発生していたなんてトラブルになることもあります。

  1. 振替休日とは

振替休日とは、あらかじめ予定されていた休日を他の日と入れ替えることです。たとえば、日曜日が休日の会社で、業務の都合により「今週は日曜日を出勤日とし、代わりに火曜日を休日にする」といった場合がこれにあたります。

この場合、休日を勤務日に振り替えたうえで労働を命じているため、日曜日に働いても休日労働にはなりません。ただし、振替を行う際には以下の条件に注意が必要です。
• 振替は「事前」に行う必要があります(出勤した後の変更は不可)。
• 振替後の労働日・休日の組み合わせが、週1回の法定休日を確保できるように設定されていること。

つまり、事前に明確に振替を指示していれば、休日出勤にはならず割増賃金も不要です。ただし、直前の口頭指示や、振替日の設定が曖昧な場合は「振替」と認められず、休日労働と見なされる可能性があります。

  1. 代替休日とは

一方で代替休日は、休日に勤務させたあと、その代わりに別の日を休ませることです。たとえば、「日曜日に急なトラブル対応で出勤し、翌週の水曜日に代わりの休みを与える」というケースです。

この場合、もともと休日に労働させていますので、休日労働として割増賃金(3割5分以上)が必要です。後日休みを与えても、「休日労働であった」という事実は消えません。あくまで、従業員の疲労回復や勤務調整のために代替休日を与えるという扱いになります。

  1. 中小企業でよくあるトラブル例

たとえば、ある製造業の会社で「日曜出勤の代わりに火曜日を休みにする」と上司が口頭で指示したものの、書面やシステム上での振替手続きがなかったケース。この場合、労働基準監督署からは「正式な振替ではなく、休日労働」と判断され、休日労働割増の未払い賃金を指摘された事例があります。

また、代替休日を与える場合に、翌月以降にずれ込むなどして「実質的に消化されていない」ケースも注意が必要です。代替休日は可能な限り早めに与えるよう運用することが望ましいでしょう。

  1. 適切な運用のためのポイント
    • 就業規則や勤務カレンダーに「振替休日の手続き・通知方法」を明記する
    • 振替指示は「書面」または「勤怠システム上」で事前に行う
    • 代替休日は早めに取得させ、未消化が出ないよう管理する
    • 振替と代替を混同せず、給与計算時に割増対象かを確認する

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まとめ
「振替休日」は事前に休日と勤務日を入れ替える制度であり、割増賃金は不要。一方「代替休日」は休日労働をした後に休みを与える制度であり、割増賃金の支払いが必要です。
この違いを理解し、正しく運用することが、企業にとっての法令遵守と労務トラブル防止の第一歩です。

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